科研概要
「分権的発展の効果と潜在力:インド29州の比較分析を通じた民主主義的安定のかたち」
本研究グループの研究成果と今後の課題
本研究に先行して本研究グループは、平成24年度科学研究費補助金を獲得し、インド州政治の比較研究を積み重ねてきた。5年間にわたる共同研究を通じて、
- 各州がそれぞれ異なる課題を持っており、その研究には異なるアプローチが必要なこと
- 各州が固有の歴史的背景を有しているので、現在を分析するうえでも、歴史的経緯を踏まえるべきこと
- 全国レベルの政治に影響を受けつつも、州政治は独自の政治領域として機能していること
- それゆえ全国政治を参照枠組みとしながら、その個別性を比較研究する価値があることが明らかとなっている。
そこで本研究では、インド全29州とデリー首都圏を分担して調査・研究し、
[1] 連邦制の枠組みの中で、それぞれの州がどのように個別の特色を育ててきたのか
[2] そしてそれが潜在的な紛争要因をどのように封じ込め、またインドという枠組みをどのように利用し、そこからいかなる影響を受けてきたのかを明らかにする。
研究の目的
研究は、インドを、一国としてというよりも、その構成単位である州の政治と言う観点から分析し、潜在的には対立や紛争、分裂の危機をはらんでいるインドの言語、宗教、カーストなどの多様性が、数々の危機を乗り越えて民主主義的な安定を確立し、今日、地域大国として経済的にも国際政治においても重要なアクターとなったプロセスとメカニズムを探る。これを通じて、「単一の主権に服しながらも独自の政治発展を遂げている州政治間の比較研という新たな研究の地平を開くとともに、異なる、そしてしばしば対立する諸集団が一つの主権国家内において共存し、むしろ競争して社会経済的発展につながっていくための要因を明らかにして、冷戦後世界における地域紛争へのアプローチのための示唆を得ることができる。